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執筆者の写真成蹊大学新聞会

家族療法 相互理解のきっかけに

多くの人が個人の精神的な問題はその人の心に原因があると捉えてしまいがちだ。しかし、それを個人だけでなく、家族全体の問題として捉え解決を試みる家族療法という心理的ケアの手法ががある。今回、日本家族療法学会会長の児島達美さんに話を伺った。


人は孤立しているのではなく、周りの人や環境とのインタラクション、すなわち関わり合いの中で生きている。そのため精神的な問題は個人だけでなく、交際関係や職場環境など周りとの関わり合いも重要な要因になり得る。これを家族関係に応用したのが家族療法だ。この心理的ケアでは、問題の責任を特定の誰かに追及することよりも、どのようにその個人と家族が関わり合っているかに重点を置く。こうした親子や兄弟間などの関わり合いがうまくいかないと家族関係の悪化といった問題が生じる。家族療法ではこうした家族の関わり合いの改善を図り、個人の精神的問題のより良い解決を目指す。


また、良好なインタラクションを作るには相互理解が不可欠だ。家族間の相互理解のため、私たちの普段の生活において実践できることがある。まず、家族で食事を取るなど日常生活の時間を共有すること。そして他愛もない会話を楽しむことである。これは、直接対話せずとも、メッセージアプリでも可能だ。しかし、子どもの成長や親の加齢などに伴って、それまでの家族間のインタラクションがうまくいかなくなる場合もある。実際、大学生になり家族と離れて暮らすようになった、会話の機会が減ったという人も多いのではないだろうか。こうして家族の関係に変化が生じた際は、恐れずに楽しむ余裕を持ち、その都度家族で話し合う場を設けるなどといった相互に理解する努力が重要だ。児島さんは「家族によってインタラクションの在り方は異なる。他と比べるのではなく、それぞれの方法で関係を築くことが大切だ」と語る。家族でもお互いを完全に理解することは難しいが、できることから始めるのが有効だ。自由な時間が増える長期休業期間に、家族との交流を深めるのはいかがだろうか。(高橋豪)

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