雨と聞くと、遅延した満員電車や、濡れてしまったプリントなど、ネガティブな印象を持つ人が多い。雨の多い今の時期は、なおさら強く感じるだろう。しかし、私たち日本人は雨を四季折々の言葉で表現し楽しんできた。
梅雨の語源は、古代中国の梅が実る頃の長雨だという。はっきりしない天気の続く梅雨だからこそ、数日間の晴れ間を「梅雨晴れ」と呼ぶ。そして梅雨が明け夏になると、バケツをひっくり返したような雨、すなわち「夕立」が降るようになる。夕立には「篠突く雨」という別称もある。篠とは密生する細い笹竹の総称で、これを隙間なく束ねて突き落としたように雨滴がひしめき合っていることから、こうした言い回しができたようだ。
他の季節にも、雨の固有な呼び名がある。菜の花の咲く季節である春では長雨を「菜種梅雨」と呼ぶ。秋では「霧雨」によって辺りが霞んで見える。晩秋から初冬にかけては、降ったり止んだりする「時雨」が見られる。
このように、日本では四季に対応したさまざまな雨の表現があるが、これは恵まれていると言える。世界には雨季と乾季しかない国があり、こうした国では、雨によって季節を感じることはできない。連日の雨で気が滅入ってしまうかもしれないが、そんな時こそ、雨を季節を感じる要素のひとつとして楽しんで欲しい。(石黒茜子)
《参考文献》
『雨と日本人』(宮尾孝、丸善、1997年)
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