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執筆者の写真成蹊大学新聞会

社会の変化と家族の形

日本社会の変化は家族の形に大きな影響を与えてきた。今回、江戸時代から現在に至るまでの家族の変遷を追うため、文学部の渡邉教授に話を伺った。

江戸時代までは、家族の形は多種多様であった。男性の長子相続だけでなく、末娘や能力主義による相続などが見られた。だが、明治維新から戦前までの時代には、旧民法の家制度により家族の画一化が進められた。これにより、戸主である男性は家族に対して扶養の義務があった代わりに、結婚や遺産の分配などを決定する権利を有するようになる。


第二次世界大戦終結後になると民法改正により家制度は解体。さらに、高度経済成長期に主な産業が第一次産業から第二次、第三次産業に変化したことはさまざまな変化を家族にもたらした。その一つは出生数の低下だ。子どもが働き手からお金をかけて教育する存在に変化したことや、公衆衛生が向上したことにより子どもをたくさん産む必要が無くなった。加えて、地方の人々が集団就職で都会に移り、新しく家庭を築くようになったことで核家族が増えた。これが現在の家族の基盤となる。この時期には家庭内における性別役割分業の考え方も一般化した。充実した給料や福利と引き換えに際限なく働く男性に代わり、女性が家事を担うことが当たり前になっていた。


しかし近年は、女性の社会進出と長引く不況の影響で女性もフルタイムで働くようになり、共働き世帯が一般的となった。一方で共働きとなっても、家事や育児は依然として女性が多く担っていることが問題視されている。また、戦後から増加してきた核家族は、周囲からの介入を受けにくいためにさまざまな問題を抱えやすくなった。例えば歳を取っても介護をしてくれる人がおらず、高齢者が高齢者を介護する「老老介護」が増えている。同様に、虐待や家庭内暴力が外から見えにくい点も核家族の問題と言えよう。


家族の形やそれに伴う問題はこれからも変化する。渡邉教授はこれからの家族について、晩婚化や未婚率の増加により誰もが家族を持てるというわけではなくなる一方、LGBTQの家庭も出てくるなどますます家族が多様化していくと指摘した。そして、多種多様な家族の形があることを認め、尊重し合ってほしいと語った。(永松由衣)

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