日常生活をより豊かにするために嗜好品の存在は欠かせない。中でも、お酒やたばこと並ぶ嗜好品の代表格であるコーヒーは、幅広い世代に好まれている。
コーヒーが現在のように広く飲まれるようになるまでには歴史がある。コーヒーを飲む習慣の始まりは、宗教上の理由でお酒を飲めないイスラム教徒が、15世紀頃に代替品としてたしなんでいたことだという。幕末期に日本に伝来したが、幕府の人が初めてコーヒーを飲んだ際に「焦げ臭く味わうに耐えない」と書き記したという逸話が残る。当時の日本人は慣れない香りや苦味を苦手とする人が多かったと推察される。しかし開国を機に外国文化に憧れる日本人が増え、コーヒーを飲む機会が増加した。1960年代にはコーヒー豆の輸入が全面自由化し、多数の国内メーカーがインスタントコーヒーの製造を開始したことで、より一般的な嗜好品として広まった。
今回、コーヒーと私たちの日常とのつながりについて、嗜好品を研究している文学部の小林盾教授に話を伺った。コーヒーは飲み過ぎによる人体への影響が少なく、適量を心掛ければ付き合いやすい。コーヒー特有の香ばしさや含まれるカフェインは、眠気を覚ます他、気分を変えるのに効果的だ。さらに、誰かとコーヒーを飲むことで交流が広がったり、会話のきっかけになったりする。
また小林教授は、欧州の人々にとって、コーヒーは日本人とお茶の関係に近いと話す。欧州の人々は、日本人よりも日常的にコーヒーを摂取する傾向がある。実際に、日本人が1年間で摂取するコーヒーの量は、欧州平均よりも少ないという統計が出ており、海外の習慣は日本と一線を画している。
小林教授は、嗜好品は生活に豊かさを与え自身を後押しする「幸せのエンジン」だと語る。嗜好品は生活必需品ではないが、たしなむことで幸福感を味わえる。そういった嗜好品の一つであるコーヒーは、長い歴史を経て現在も私達の生活と深い関係を持ち、その楽しみ方も無限大だ。コーヒーを通してささやかな幸せを味わってみるのも良いだろう。(高橋豪)
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